悪魔の引鉄


    手酷く罵られたドフラミンゴは短い舌打ちの後に糸を撃ち込むが、
    は武装色を纏ったスカートでそれを払う。

    は銃で心臓と脳天を狙い撃ちするが
    ドフラミンゴの武装色の前に通りはしない。
    しかし発砲する動作には迷いも躊躇も感じられなかった。

    「あなたの心臓が欲しいのよ、
     そう硬くならないでちょうだい!」
    「フフフ!欲しけりゃ奪ってみりゃいいさ。海賊だろう?
     やってみろよ・・・出来るもんならなァ!」

    銃弾が覇気をまとい、足下が深くえぐれたのをみて、ドフラミンゴは口笛を吹いた。
    そのままドフラミンゴが空中を蹴ると、そのつま先から糸がしなるように飛んでくる。

    ただの糸じゃない。触れれば真っ二つ。
    きっと本気になれば、一瞬で勝負はつくはずだ。
    だが、はその糸を月歩で避けた。
    ギリギリ避けれる速度での攻撃に、は舌打ちする。

    ドフラミンゴの所作には、猫が獲物を弄ぶような残忍さが滲んでいる。
    完全に遊ばれているのだ。
    がそれに気づかないはずも無い。

    軽々空を飛ぶドフラミンゴに魔眼は届かないと見て、
    は2個目、3個目の拳銃を連発する。
    スカートに隠した拳銃やナイフは数に限りがあるけれど、構わずに撃ち捨てる。
    だが七武海を相手にするには力不足だ。
    現にドフラミンゴにはかすり傷程度しか傷つかない。

    反してはドフラミンゴの糸をいなしきれていない。
    腕に、足に、肩に糸が食い込む。
    の白い服は己の傷で徐々に赤く染まっていく。

    「・・・無駄な攻撃、本調子じゃなさそうだなァ、えぇ?
     おれァもっと苦戦すると思ってたんだが」

    ドフラミンゴが軽く手首を振った。
    散らばった糸が勢いをつけてに向かう。

    「”武装色”!」

    白いスカートが黒く染まり、花のように翻る。
    糸はスカートに当たって地面に落ちた。

    は指が震えてきたのがわかって眉根を寄せた。
    奪いとった生命力で無理に抑えつけていた毒がその効果を発揮し出している。

    「ローってば本当に余計なことをしてくれたわ、」
    「おいおい、もうおしまいか?」

    素早く近づいてきたドフラミンゴにが瞬く。が、既に遅い。
    ドフラミンゴがの腹を蹴り倒した。顎を掴み、地面に叩き付ける。
    馬乗りになり、その手を高く掲げた。

    「ぐッ!」
    「敵わねえとわからない奴でもあるまいに、なぜそんなに死たがる?」

    ドフラミンゴは変わらず冷徹な笑みを浮かべているが、
    声色には奇妙な憐憫が混じっているように聞こえて、
    は思わず息を飲んだ。
    しかし一瞬見せた躊躇いもすぐに消え去る。

    微笑んだ。その悪意を隠しもせずに。

    「・・・ふふ、ドフラミンゴ、私がか弱い女だとでも思ったの?」
    「何?」
    「能力圏内よ。”強制麻痺”!」
    「!?」

    を見下ろすドフラミンゴから笑みが消える。

    ドフラミンゴは魔眼の対策はごく単純に出来ると聞いていた。
    自身のトレードマークでもあるサングラス、それが魔眼から身を守る術なのだと。
    しかし、今やドフラミンゴの身体は魔眼による麻痺で動かない。

    「サングラスが対策になっているとでも思った?
     そんな生易しいものじゃないわよ、コレは」

    トントン、と目元を指で叩いて、ドフラミンゴを挑発する
    青筋を立てるドフラミンゴの指をわざと時間をかけるように一本ずつ外し、
    その手の平を地面へとつけさせた。

    至近距離、魔眼の効果はジワジワとドフラミンゴを蝕むようだった。
    全身を針で刺されているかのような痛みと、
    あるいは強い酒を浴びるように飲んだような酩酊感に襲われている。

    「テメェ・・・」
    「簡単なのよ、本当は。魔眼の効果は変幻自在。
     最高に痛みを伴う死に方も、至上の快楽を伴う死に方も、時間の長短も思いのまま、
     より取りみどりよ。良かったわね・・・どう死にたい?」

    当てつけるように、歌うように紡がれた言葉に
    ドフラミンゴは身体を動かそうと力を入れるが、ままならない。
    その抵抗を味わうように、は艶っぽく眼を細めた。

    「殺そうと思えば一瞬で殺せる。でも私はそうしない。
     その一瞬で全てが終わるなんて幸福をあなたに与えたりしない」

    の指がドフラミンゴの肌を滑る。
    腹から胸、喉を通り、その頬を撫でた。
    ドフラミンゴは眉を顰める。

    魔眼によって感覚が鋭敏になっているのだろうか、
    かすり傷が伴う僅かなはずの痛みが増幅し、歪な快楽を伴ってきている。
    ドフラミンゴの微かな困惑に気がついているが、真っ赤な唇で弧を描いてみせた。

    「私は復讐がしたいだけ。あなたに死に勝る苦痛を味わわせたいのよ。
     すぐに殺してしまうなんてそんなもったいないことしないわ」

    ドフラミンゴの胸ぐらを掴み、その顔をさらに近づける。
    宝石のような虹彩の1つ1つを読み取れる程の距離で、は甘ったるく囁いた。

    「付き合ってよ。アバズレと罵るこの私に、
     こうしてまんまと膝をつかされてるだけでも相当頭に来てるはずよ。
     屈辱に苦しめ。いっそ殺してくれと懇願させてやる・・・!」
    「イかれてるなァ、お前も・・・!」

    ドフラミンゴが無理矢理に口の端をつり上げた。
    恐ろしい形相だが、は気にする様子も無く、その首に手を掛ける。
    ドフラミンゴの目をサングラス越しに覗き込んだ。
    舞台女優のように堂々と、セリフをなぞるようには言葉を投げかける。

    「我々は良く似ている」

    投げかけられた言葉、それを紡ぐ唇と、爛々と輝く瞳から、眼が離せなくなっていく。

    「人間の奥底に、獣以下の残虐性が眠っていることを、我々は誰より知っている。
     その獣性を我々は利用する。あなたは支配して、私は誑かす。
     時に自分自身でさえも」

    はいつのまにか口元から笑みをぬぐい去っていた。視線が交錯する。
    奇妙な感覚だった。その時だけ、お互いの敵意や殺意が凪いだように静かだった。
    心の奥底を暴き合うように、ただひたすらに見つめ合う。
    かつてドフラミンゴが、海の上で離れ行く視線を惜しんだ時のように。

    「あなた、あの人を”ロシナンテ”とは呼ばないのね」

    ドフラミンゴが眼を見開く。
    がその唇に柔らかくかぶりついた。

    ドフラミンゴは咄嗟に歯を食いしばり、首を振って拒もうとした。
    の口づけに、どんな作用があるのかは知っている。
    受け入れるわけにはいかないと理性は叫ぶが、徐々にその叫びは遠のいていった。

    頑なだった唇が徐々にほころび始める。
    意思と関係ないところで、本能がそうしろと命令するように。

    地面を爪で抉る。そうせずには居られなかった。
    全身の皮膚が粟立っていくようだ。寒気を伴う恍惚が背筋を電流のように流れていく。
    頭の芯が熱を帯びていって、息の仕方さえ忘れてしまいそうになる。
    ざらついた舌が絡んだ瞬間の感触ときたらどうだ。

    ここまで凄まじい、くらくらするような快楽が、まともな状態で得られるわけが無い。
    ドラッグで無理矢理感覚を鋭敏にしたみたいに強烈で、抗い難い感触だった。

    首に回された手に力が入る。より深い口づけを求めるように、
    の手がドフラミンゴの頭蓋を撫でるように動く。

    震える程の快感。それを味わっているのはどちらなのだろうか。
    腹の底が煮えたぎるように熱い。
    蛇が絡み合うように、ほどけるのを厭うように結ばれるその感覚が頭をおかしくさせている。

    鼻を抜けるような声は、恍惚のため息を漏らしたのは、その唾液を注いだのは誰なのだろうか。
    端から見れば睦み合う2人に見えたのだろうか。
    それとも喰らい合う2匹の獣だったのだろうか。

    いつしか、の瞳は強く発光していた。

    意識が蕩けるような感触に目眩を覚えながら、
    いつのまにかの手の平がドフラミンゴの頬を撫で、
    そのサングラスに手をかけるのを好きにさせていた。

    タイミングの問題だったのかもしれない。
    に取っては致命的で、ドフラミンゴにとってはその”支配”から逃れるための一瞬だった。
    息継ぎのために僅かに唇が離れ、が瞬きをしたのだ。
    とたんに理性が戻って来て、その恐怖を思い出させた。

     このままでは死ぬだろう。目の前の女によって!

    「ッ・・・!"オーバーヒート"!」
    「・・・!あぁッ!」

    余裕も手加減も無くドフラミンゴ自身の足を貫通させた糸の鞭は
    の腹をもえぐってみせた。
    ドフラミンゴは痛みにのたうつから素早く距離をとり、
    怒りと屈辱に任せてその身体を思い切り蹴り飛ばした。
    数メートル吹き飛び、瓦礫に当たってうずくまったは腹を抑えている。

    「、ハァッ・・・!」

    ドフラミンゴが息を吐く、
    先ほどまで感じていた至上の快楽は今や僅かな余韻を残して消え去っていた。
    凄まじい虚脱感と、能力者特有の水に落ちた時に感じられる
    倦怠感を強くしたようなだるさが全身を覆っている。
    おまけに左腕の先と、足元、特に膝から先の感覚が殆ど無い。枯れる寸前だったのだろう。
    糸で筋肉を補強するように腕と足を覆いながら、ドフラミンゴは覇王色の覇気を迸らせた。

    !・・・身の程知らずの売女が、このおれをよくも!」
    「案外理性的じゃないの。つまらないわね・・・!」

    虚勢を張り唾を吐いたに、青筋を立てたドフラミンゴは指を動かす。
    ソファの足元で血まみれで寝そべっていた男がゆっくりと立ち上がった。

    「ベラミー!いつまで寝てやがる。おれの部下なら敵は排除しろ。
     今のお前にもその位はできるだろうが・・・!」

    呻きながら立ち上がった男の顔を見て、は眉を顰めた。
    腫れ上がった顔。額から流れる血。

    「・・・部下に対する扱いには見えないわ」
    「フフッ、勝手におれを慕い、思い通りに事が運ばねェとヤケを起こす・・・、
     生まれついてのチンピラ。そんな男だよ、コイツはな!」

    ドフラミンゴが腕を振るう。
    ベラミーがその巨体で突っ込んでくる。
    は避けるが、張り巡らされた糸がその逃げを許さない。
    足首の深くまで切られて、は無様に地面に叩き付けられた。

    「ぐ・・・!」
    「もう、もういい・・・殺してくれ」
    「うるさいわよ!邪魔しないで!」

    が手を薙ぎ払うように振るい、ベラミーを魔眼で強制的に気絶させた。
    肩で息をして、必死の形相で睨むに、
    ドフラミンゴはやれやれと言わんばかりに額に手を当て首を振る。

    「お前も酷なことをする。
     死なせてやればソイツも楽になれたろうに」

    「あなたのパラサイトは、悪魔の実の能力までは使いこなせない。
     コントロール精度はそこまで高くはないし、意識さえ奪えば殺す必要も無いわ。
     生きている、意識のある人間をマリオネットにすることに意味があるんでしょう、
     ・・・反吐が出る」

    の言い草に、目を見張ったドフラミンゴは笑う。

    「フッフッフッフッ!!!
     さっきからなんだ。おれの理解者を気取るんじゃねぇよ、
     ドブネズミ以下の娼婦、実験動物の成れの果てのお前が!」
    「あっ、ぐ、・・・!」

    肩を蹴られる。嬲るように傷口を靴先で抉られて、
    苦痛に呻きながら、はついに地面に仰向けに倒れた。
    その頭を踏みつけて、ドフラミンゴは囁く。

    「”跪け”とは大きく出たもんだな、ええ?
     欲望を煽るしか能の無ェ、お前の目を頭蓋ごと砕いてやるよ」

    その言葉に、はドフラミンゴを見上げる。
    の唇は血が出る程にキツく閉ざされていた。
    生意気にも涙は見せず、先ほどまで宝石のように煌めいていた瞳はその輝きを失い、
    美貌は満身創痍でくすんでいる。
    哀れな女だと、ドフラミンゴは目を細めた。

    「残念だったな。・・・”弱い奴は、死に方も選べない”」
    「ふ、」

    ドフラミンゴの言葉に、は僅かに吐息を零した。
    その声は、恐ろしく甘く、低く、静かだった。

    「”弱い奴は・・・死に方も、選べない?”
     フフッ、フフフッ!アハハハハッ!!!」

    地に臥し、額の半分を地面に擦り付けながらも、
    その全身を血と泥に浸しても、は笑ってみせる。

    「だったら、あなたは、選べたって言うの?」

    の灰色の瞳がドフラミンゴを見上げる。
    魔眼の力はもうその目に宿っては居ない。
    にも関わらず、背筋に這い上がるものがあった。
    つま先から冷気が立ち上ってくるようなそんな感覚を覚え、ドフラミンゴは眉を顰める。

    「ああ、おかしい!笑っちゃうわ・・・!
     あなた、みんな殺したくて殺したって?
     ・・・嘘吐きねぇ?私にそれが、分からないとでも?はは、はははっ!」

    「・・・黙れ」

    「あらァ?あなた今、自分がどんな顔をしているのか自覚ある?」

    の目が細められ、口の端が不敵に吊り上がる。
    わざとらしく甘ったるい声をは作り上げてみせた。

    「”笑えてない”わよ、ドフラミンゴ」

    ドフラミンゴは、思わずその肩を蹴り上げていた。
    低く、くぐもった悲鳴を上げ、はその手で肩を抑える。
    しかし、まだ、その口元に笑みを浮かべてみせる。

    「・・・どうしたの?”弱者”の囀りがそんなに耳についた?
     ”ドブネズミ以下の娼婦”の言葉に、なんでそんなに怒っているの?
     聞き流せば良いじゃない・・・フフフッ、そうよね、無理よねぇ」

    ドフラミンゴの笑みを剥ぎ取り、は代わりに嗤っているようだった。

    「10歳で父親を殺した時のことも、血を分けた弟を殺した時のことも、
     あなた今でも夢に見るんだわ、それで、最悪の気分で目を覚ますの。
     全身から冷や汗が吹き出てる、倦怠感に襲われて、身体は重いまま。
     眠ったのに疲れきっていて、酷い時には涙まで流してる。
     ・・・あっはっはっは!」

    「黙れって言ってるだろうが!」

    傷口を踏みつけても、蹴り上げても、は嗤っていた。
    痛みも、苦痛も、の口を閉ざすことは出来なかった。

    「なら、黙らされる前に・・・一つ、教えておいてあげなくっちゃ、いけないわね、
     あなた、私がローやモネを”洗脳”したって思ってるんでしょう?」

    が目を細める。

    「魔眼はそんなに万能じゃあ、ないわよ」
    「・・・なんだと」

    ドフラミンゴはを見下ろす。
    踏みつけて、見下ろしているはずだ。だが、は折れていない。
    その目にはまだ煌々と復讐の火が燃えている。

    「モネに関して言えば、確かに”洗脳”に近いことはしたわ。
     だけど、私はきっかけを与えただけ。
     彼女が目を逸らしていた”良心の呵責”にむりやり目を向けさせた。
     それだけよ。ああ・・・、一度だけ、私を起こせと命令したわね。
     でもその後、彼女は彼女の意思で行動してる」

    は一度目を閉じ、嗤う。

    「トラファルガー・ローに関して言うのなら、
     私は魔眼の効果を、彼に一切使わなかった」

    ドフラミンゴは声を荒げ、を詰った。

    「嘘を吐くな、白衣の悪魔!
     お前はローが旗揚げしてすぐにあいつの船に乗ったんだろう!?」

    「フフ、だって洗脳する必要も、誘導する必要さえ、無かったんだもの」

    は瞳を開け、ドフラミンゴを伺っている。

    「ローの目的は最初から、ドフラミンゴ、あなたを倒すことだった。
     きっと私が居なくても、たとえ一人でも、彼はドレスローザに来たわ。
     あなたを玉座から引きずり下ろすために、・・・”コラソン”の本懐を遂げるために」

    ドフラミンゴの唇に、笑みは戻らない。

    「・・・あなたにとって、ローは特別だったのよね?」

    は問いかけていながら、断定するようだった。

    「ロシナンテさんが言ってたわ。
     幼い頃のあなたに、ローはよく似ていると。
     あなたは”あなた”が一番大事。自分が害されることだけは我慢出来ない。
     ”家族”はあなたを構成する要素の一つ。だけどあなた自身ではない。
     そのなかで、ローだけは第二の自分のように思っていたのでは?
     その境遇と、その望みが、あまりに似通っていたから」

    なぜ、ドフラミンゴがローを野放しにしているのか。
    がローの船に乗るにあたり、ドンキホーテ・ファミリーを調べる内に、
    はある仮説に辿り着いた。

    おそらく、ドフラミンゴはローを”特別視”している。

    互いに裕福な家庭に生まれ、生まれて数年間は幸せに、恵まれた生活を送った。
    しかしおよそ10年程で人間の残酷さと理不尽に打ちのめされ、
    その日からこの世のすべてを憎んでいた。全てを壊す事だけを考えた。

    だからこそ、ローが自身の意思で己の下へ帰ってくることを望んだのではないだろうかと。

    「残念だけど、ドフラミンゴ。ローはあなたとは違う」
    「・・・もういい」

    ドフラミンゴはもうたくさんだ、と首を振った。
    しかしは言葉を続ける。鋭い牙を、柔肌に食い込ませるように。

    「彼は逃げなかった。状況に流される事も無く、
     彼の意思であなたに牙を剥いた。
     彼はもう、”あなた”ではない。第2の”天夜叉”にはなり得ない。
     トラファルガー・ローはあなたの”コラソン”にはならない」

    そしては、トリガーを引いた。

    「愛も、情熱も、”ハート”が無ければ感じることさえ出来やしないでしょう、
     あなたは愛も情熱も知らない、ガラクタの、オモチャの国の王様」

    ドフラミンゴのこめかみに青筋が浮いた。
    は口の端をつり上げる。

    「10年間の、天竜人の真似事、ままごと遊びは楽しかった? ”ぼく”?」

    糸の鞭がしなって風を切るような音を立てた。
    血飛沫が上がる。

    ドフラミンゴがの左脚を切断したのだ。

    一拍も置かず、つんざくような悲鳴がの喉から滑りでる。
    すでに汚れていたドレスが血に染まっていく。

    「お前の戯れ言は聞き飽きた」

    ドフラミンゴは叫ぶの首を掴んだ。
    そのまま掴みあげて、視線を合わせる。
    はもう魔眼を使えない。その気力さえ残っていない。

    「さよならだ。
     そのつまらない人生を終わりにしてやる」